田中功起《移動と絶滅》の試写と対話

駐日欧州連合(EU)代表部は2024730日(火)、同代表部の文化プロジェクトの一環でアーティストの田中功起氏が制作した新作映像《移動と絶滅》の上映会を、森美術館(東京都港区)にて開催します。このイベントは森美術館の「アージェント・トーク」として行われ、上映後には同作品にも参加した哲学者・柳澤田実氏を交えたトークセッションが続きます。

 

森美術館の「アージェント・トーク」は、世界各地で意義深く、革新的な活動をしているアーティスト、キュレーター、批評家、活動家などを囲み、今議論すべきアージェントなトピックスを話し合うためのプラットフォームです。

 

移動の自由と移動の制限の狭間で、私たちの倫理はどこに向かうのでしょうか。哲学者のサミュエル・シェフラーは私たちの倫理的な価値は人類の存続を前提に定められている、自分の死後も人類が存続していくことを私たちは前提にして今を生きている、といいます。

 

今回の「アージェント・トーク」では、駐日欧州連合(EU)代表部のプロジェクトの一環でアーティストの田中功起氏が制作した新作映像《移動と絶滅》を上映し、同作品にも参加した哲学者・柳澤田実氏を交え、議論します。《移動と絶滅》はコロナの際に廃業し、ワクチン接種センターとして使われた宿泊施設を使い、20243月に行われた実験的なイベントを撮影したものです。そこでは人類学者、アクティヴィスト、政治学者、メディア理論家、そして哲学者が、小惑星による人類の滅亡と、不妊による緩慢な人類の絶滅というSF的シナリオを元に、議論を進めます。作品はまた、出生、気候変動、気候難民、ガザ、家族、詩、身体、規範、不安、右翼政治、時間、猫などについての意見が錯綜する、人間という活動の

記録でもあります。気候危機の脅威が劇的に増大していく中で、私たちはモビリティの基本的概念をどのように見直すことができるのでしょうか。

 

人類をパンデミックが襲い、各地で戦争が続く現代において、さまざまな会話の断片を繋ぎながら、今日の世界をどのように描けるのか、共に考えてみましょう。

 

【日時・会場・申し込み先】

2024730日(火)19:0021:00(受付開始 18:45

作品上映開始:19:00~ トーク:20:0021:00

※日英同時通訳付

会場:森美術館オーディトリアム

定員:70名(要予約、先着順)

料金:無料(閉館後の開催につき、展覧会はご鑑賞いただけません)

申し込み先(728日まで):https://www.mori.art.museum/jp/learning/7366/

【出演】

田中功起(アーティスト)

柳澤田実(哲学者)

【モデレーター】

片岡真実(森美術館館長)

【主催】

森美術館、駐日欧州連合(EU)代表部

協力】

ゲーテ・インスティトゥート東京

 

【プロフィール】

田中功起(たなか・こおき)

1975年生まれ。アーティスト。映像や執筆などによって「共に生きるとは何か」をテーマに、人々の協働や共同体のあり方を問い直す芸術実践を行う。近年は、育児とケアの視点からアートを捉え直す制作、執筆活動を続けている。

主に参加した展覧会にあいちトリエンナーレ(2019年)、ミュンスター彫刻プロジェクト(2017年)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2017年)など。2015年にドイツ銀行によるアーテスト・オブ・ザ・イヤー、2013年に参加したヴェネチア・ビエンナーレでは日本館が特別表彰を受ける。著作、作品集に『リフレクティブ・ノート(選集)』(アートソンジェ、美術出版社、2020年/2021年)、『Precarious Practice』(Hatje Cantz2015年)、『必然的にばらばらなものが生まれてくる』(武蔵野美術大学出版局、2014年)などがある。

 

柳澤田実(やなぎさわ・たみ)

1973年、ニューヨーク生まれ。専門は哲学・宗教学。関西学院大学神学部准教授。東京大学21世紀COE研究員、南山大学人文学部准教授を経て、現職。編著書に『ディスポジション哲学、倫理、生態心理学からアート、建築まで、領域横断的に世界を捉える方法の創出に向けて』(現代企画室、2008年)、『知の生態学的転回3 倫理:人類のアフォーダンス』(東京大学出版会、2013年)ほか。2017年にThe New School for Social Researchの心理学研究室に留学し、以降、道徳基盤理論に基づく質問紙調査を日米で行いながら、宗教などの文化的背景と道徳性の関係について研究している。

 

写真のクレジット

田中功起

《移動と絶滅》

2024

©Koki Tanaka, 2024