日EU合同金融規制フォーラム第2回会合における共同声明

24.11.2020

EU News 329/2020

日本 金融庁仮訳>

EU合同金融規制フォーラムの第2回会合が20201120日、テレビ会議形式にて開催された。参加者は、新型コロナウイルス感染症のEU、日本及び世界的な金融システムの健全性に与える影響と共に、それぞれの法域又は多国間での金融規制及び監督上の対応について、議論を行った。さらに、多くの規制及び監督上の論点と共に、特に、再建・破綻処理分野及び保険セクターにおける協力の強化について議論した。欧州委員会から、近時公表されたデジタル・ファイナンス・パッケージにおける主要な提案について説明がなされ、金融庁からは、日本の国際金融センター機能の強化のための新たな政策提言を説明した。

EU合同金融規制フォーラムは、森田宗男金融庁金融国際審議官及びジョン・ベリガン欧州委員会金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局長が共同議長を務めた。本フォーラムには、金融庁及び欧州委員会に加え、日本銀行、欧州中央銀行(ECB)、欧州銀行監督機構(EBA)、欧州証券市場監督機構(ESMA)、欧州保険年金監督機構(EIOPA)及び単一破たん処理委員会(SRB)の幹部が同席した。

参加者は、新型コロナウイルス感染症の拡大が、EU、日本及び世界の金融市場・金融サービスセクターに与える影響について、一般的に議論した。また、国際的な基準設定主体が行った措置について議論すると共に、それぞれの地域における現在までの対応及び将来的な重点課題の概要についても説明した。参加者は、新型コロナウイルス感染症への経済的対応における国際的な協力及び協調の礎である金融安定理事会(FSB)の原則へのコミットメントを再確認した。加えて、G20の金融規制改革に係る合意について妥協することなく、国際的な規制基準の範囲内で従前からの柔軟性を利用することを支持した。

欧州委員会は、本年9月24日に採択したデジタル・ファイナンス・パッケージ、特に暗号資産に関する法制度提案についての説明を行った。暗号資産に関するEUの共通の枠組みの導入によって、金融安定性を維持しつつ投資家を保護する形でイノベーションが可能となる。参加者は、技術革新が、金融システムに対して大きな恩恵をもたらし得る一方、法域内における既存及び新たなリスクに対して常に注意を払い続ける必要があることを認識した。

金融庁は、日本の国際金融センター機能の強化のための新たな施策について説明を行った。参加者は、金融センターの地理的分散を通して、自然災害のようなストレスイベントに対して、世界的金融市場の強靭性を強化することの重要性を共有した。

保険セクターに関して、金融庁は我が国の経済価値に基づくソルベンシー規制の進捗状況を説明した。特に、欧州委員会及びEIOPAは、金融庁が本年6月に公表した、「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議」による報告書への関心を示した。欧州委員会は、来るべきソルベンシーII枠組みの見直しについて説明した。参加者は、保険セクターにおける規制・監督上の強固な協力へのコミットメントを再確認した。

欧州委員会と金融庁は、金融指標に関するそれぞれの規制及び監督上の取組みの進展について議論を行った。参加者は、欧州指標規則下における、日本の金融指標の枠組みに対して欧州委員会が実施している同等性付与の可否に関する審査手続きにつき議論を行った。この点に関して、両当事者は、金融指標の越境利用の重要性と、双方のルールが実質面において類似している点を確認した。

金融庁とSRBは、本年2月に開催し成功に終わった、G-SIBの破綻処理枠組みに関する日本・欧州銀行同盟ワークショップの振返りを行った。参加者は、異なる作業レベルにおける将来的な関与に向けた準備を行うため、201910月に金融庁とSRB間で実施された書簡交換における規定の実行の仕方について、具体的なステップに関する議論を継続する。

参加者は、持続的な成長に向けた金融分野における協力関係の強化に合意した。欧州委員会は、金融庁がサステナブルファイナンス・国際プラットフォーム(IPSF)のメンバーとなることを歓迎し、両参加者は、協力関係を進化すること及びIPSFの下で、国際的パートナーと共に協働することに合意した。欧州委員会は、日本と、IPSFにおける開示ワーキング・グループの共同議長を務めることに期待を表明した。

参加者は、2021年にブリュッセルで開催する見込みである次回フォーラムに向けて、本フォーラムで議論された様々なトピックや、相互に関心がある他のトピックにさらに取り組むことにも合意した。

(背景)

EU合同金融規制フォーラムは、2019年2月1日に発効した日EU・EPAの附属書8-A金融規制協力附属書に基づき開催されているものである。かかる附属書によって、本合同金融規制フォーラムは、欧州委員会及び金融庁との間で上級職員レベルの議論を行うための主要なプラットフォームとして設けられている。本フォーラムは、毎年開催される。EUと日本の金融規制協力の目的は、金融の安定性、公平かつ効率的な市場、及び、投資家・預金者・保険契約者・金融サービス提供者がフィデューシャリー・デューティーを負う者の保護を、更に強化することを目的として、二国間及び国際機関の場において協力することとされている。ECB、欧州監督者機構及びSRBは、通常、本フォーラムにおける議論に参加している。EUと日本の金融規制上の協力は、上級職員レベルで金融関係の論点について情報や考え方を交換する機会として行われてきた定期的な日EUハイレベル金融協議のかたちで、EPA発効以前から存在していた二者間の協力のもとで構築されてきた。

パリ協定のコミットメントに応えるための国際的な努力の一翼を担うものとして、IPSFは2019年10月に創設された。メンバーは、EU及びアルゼンチン、カナダ、チリ、中国、インド、インドネシア、ケニア、モロッコ、ニュージーランド、ノルウェイ、セネガル、シンガポール及びスイスの関係当局である。IPSFは、環境面で持続可能なファイナンスを目指して、情報交換や、関係する政策協調の努力を促進する。その重点課題には、タクソノミー、基準及びラベルといったイニシアティブや、投資家が世界的なグリーン投資機会を識別しかつ把握するための基礎的な要素である開示が含まれる。

20191011日、金融庁とSRBは、書簡交換の形で再建・処理に関する協力枠組みに合意した。


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