EU条約第50条に関するQ&A

<日本語仮訳>
Q: 第50条とは何ですか?
「欧州連合(EU)条約(Treaty on European Union)」第50条は、EU脱退を希望するEU加盟国のための手続きを規定しています。2007年のリスボン条約(改正条約)で初めて導入されました。
Q: EU加盟国はどのように第50条を発動するのですか?
当該加盟国は、離脱の意思を欧州理事会に通告する必要があります。書式については特に決まったものはありません。
Q: 第50条が発動されると何が起こるのですか?
「EUの機能に関する条約(Treaty on the Functioning of the European Union)」第218条3項に従って脱退協定が交渉されなけばなりません。
第1段階
ドナルド・トゥスク欧州理事会議長が、臨時欧州理事会会合を招集します。これは、4月29日に開催されます。
欧州理事会は総意により、英国のEUからの秩序ある脱退に関する指針を採択します。この指針は、EUとその加盟国の共通利益に基づく、交渉においてEUが追求する全体的原則を規定します。
第2段階
指針の採択後、欧州委員会は早急にEU理事会に交渉開始の勧告を提出します。勧告は、欧州理事会の4日後に開催される欧州委員会の会合で合意されます。
第3段階
これを受け、EU理事会は一連の交渉指令を採択することで、交渉の開始を承認する必要があります。この指令群は、強化された特定多数決(英国を除く27加盟国の72%、つまり27カ国の総人口の65%を代表する20カ国)によって採択されなければなりません。
この指令群が採択されれば、EU理事会が指名したEUの交渉者に、脱退する加盟国と交渉を始める権限が与えられます。
Q: 脱退協定はどのように締結されますか?
秩序ある脱退に関する交渉は、第50条が発動されてから2年以内に終了しなければなりません。この期間内に合意が得られなかった場合、EU条約とEUの機能に関する条約は、脱退する加盟国に適用されなくなります。
交渉が終了すると、EU側交渉者はEU理事会と欧州議会に対し、英国とEUの将来の関係の枠組みを考慮した協定案を提出します。
欧州議会は、英国出身の議員を含めた単純多数決によって、同案に同意しなければなりません。
EU理事会は、強化された特定多数決をもって協定を締結します。
英国も、自身の憲法上の取り決めに従ってこの協定を批准する必要があります。
Q: それでは、実際の交渉にはどれだけの時間をかけられますか?
交渉自体には約18カ月かかる予定です(2017年6月初旬から2018年10月、11月ごろまで)。
Q: EU側の交渉官は誰ですか?
英国を除く27加盟国の首脳は、EU理事会に対し、欧州委員会をEUの交渉者に任命するよう、要請しました。彼らは、欧州委員会が首席交渉官としてミシェル・バルニエ氏を指名したことを歓迎しました。
EUの交渉者である欧州委員会と、その首席交渉官であるバルニエ氏は、欧州理事会、EU理事会およびその準備組織に系統的な報告を行います。
バルニエ氏は、交渉期間を通じて、欧州議会に対し緊密かつ定期的に報告を行います。
EU加盟国が、交渉の準備、EU側交渉者への指示および進捗状況の評価に緊密に関与していくことは明らかです。このため、交渉が欧州理事会の指針とEU理事会の交渉指令に沿った形で確実に進むよう、EU理事会内に、常任の長を有す専用の作業部会を設置します。
欧州理事会は常に状況を理解し、交渉中に必要に応じてその指針を更改します。
Q: 交渉の実際面はどうなりますか? 交渉に使われる言語は何ですか? 交渉会合はどれくらいの頻度で開催されますか?
使用言語や交渉の構造などの実際面の問題は、これからEUと英国双方の交渉官の間で決められます。
Q: 交渉はどこで開催されますか?
交渉の場はブリュッセルとなります。
Q: 英国はいつからEU加盟国でなくなりますか?
「EU条約」と「EUの機能に関する条約」は、脱退協定発効日をもって、もしくは協定締結に至らなかった場合は離脱を通告した日から2年以内に、英国に適用されなくなります。EU理事会は、全会一致によりこの期間の延長を決定することができます。
脱退まで当該加盟国はEUの一員であり、EUとその加盟国全てがEU条約を実行するために互いを助け合うとする「誠実な協力」の原則を含めた、加盟によって生じる全ての権利と義務を有します。
Q: 協定が合意されなければどうなりますか?
単純に、EU条約とEUの機能に関する条約が、離脱通告後2年が過ぎた時点で英国に適用されなくなります。
Q: 一度脱退した加盟国の再加盟はできますか?
EUから脱退したどの国も、再加盟を申請することができます。当該国は、加盟手続きを経る必要があります。
Q: 一度発動された第50条通告を取り消すことは可能ですか?
第50条の通告発動権は英国にあります。しかしながら、一度発動されると一方的に取り消すことはできません。通告後は後戻りできません。第50条は一方的な通告取り消しについて規定していません。
Q: 第50条には実際、何が書かれていますか?
EU条約第50条
1.全てのEU加盟国は、その憲法上の要請にしたがって、EUからの脱退を決定することができる。
2.脱退を決定した加盟国は、その意図を欧州理事会に通告する。欧州理事会が定める指針に照らして、EUは、当該国のEUとの将来の関係のための枠組みを考慮しながら、脱退のための取り決めを定める協定を当該国と交渉し、締結する。その協定は、EUの機能に関する条約218条第3項にしたがって交渉される。同協定は、欧州議会の同意を得た後、特定多数決でEU理事会によりEUを代表して締結される。
3.EUの諸条約は、脱退協定の発効日より、もしくは協定を締結できない場合には第2項に言及された通告から2年後より、欧州理事会が当該国との合意の上でこの期間の延長を全会一致で決定しない限り、当該国への適用を終える。
4.第2項および第3項の目的を果たすため、脱退する加盟国を代表する欧州理事会もしくはEU理事会の構成員は、欧州理事会もしくはEU理事会の議論あるいはそれに関する決定には参加しない。特定多数決は、EUの機能に関する条約第238条3項(b)によって定義される。
5.EUから脱退した国が再加盟を要請する場合、その要請はEU条約第49条に規定された手続きに従う。