欧州、日本と出会うー2025年大阪・関西万博におけるEU文化

<日本語仮訳>

2025年、世界の注目が大阪に集まりました。日本の万国博覧会は、大阪を壮大な舞台へと変え、各国や人々がアイデア、プロジェクト、未来へのビジョンを交換する場となりました。

 

数あるパビリオンの中でも、ひときわ輝きを放ったのが欧州連合(EU)のパビリオンです。その文化プログラムは、創造性の生きたモザイクとなり、伝統、建築、音楽、舞踊、現代アートとデジタルアート、映画、デザイン、ファッション、テキスタイルが織りなす万華鏡のような場所となりました。

EUは世代、大陸、価値を超えた異文化間の架け橋を築くことに取り組んでいます。2025年大阪・関西万博では、気候変動、デジタル変革、平和、社会的包摂といった重要なテーマについての対話をつなぐ場ともなりました。

European Union Youth Orchestra

祝福の日:ヨーロッパ・デー(5月9日)

ヨーロッパ・デーには、EUの鼓動が鮮やかに響き、パビリオンは音、映像、そして出会いの渦へと姿を変えました。

オーストリアのアルスエレクトロニカが監修した「Future Music: Pianographique」では、人工知能が人間の才能と交わり、未来の音の風景を紡ぎ出す姿が観客に披露されました。

「EUユース管弦楽団」の吹奏五重奏団は、会場に歓喜のエネルギーを響かせ、日本の音楽家たちと共にワークショップを行い、あらゆる空間を文化共有の場へと変えました。

オーストリア人アーティスト、グロリア・ベネディクト氏によるコンテンポラリーダンス・パフォーマンス「Breath」では、観客は単なる鑑賞者ではなく物語の一部となり、歴史の振り付けや想像上の未来を問いかける体験をしました。

 

Breath by Gloria

夜には、フランスのクリコー・クーシアン氏と日本のMayu Depth氏によるコラボレーション「DJ Back-2-Back」が、ビートと映像、光が織りなす没入型の嵐で会場を熱狂させました。

「ヨーロッパのおとぎ話」は、EU加盟27カ国の童話を再構築し、日本語に翻訳、さらに日本人アーティストによる挿絵が添えられた一冊。家族連れは、文化や世代を超えて共有される想像力の贈り物に心を奪われました。

また「EUフィルムデーズ」が開幕し、アニメーションに特化した欧州映画祭がスタート。9月まで日本各地を巡回しました。


創造の季節:5月~10月

Home Beyond the Dawn

EUパビリオンは、全万博期間を通じて、伝統と技術が対話し、先人の知恵が現代の課題と融合し、欧州の創造性が日本の芸術と共鳴する、アイデアの実験室となりました。

イタリアのThe Fake Factoryによる「Immersive Digital Art: European Masters of Digital Art」では、光と音が変幻する世界に来場者が包まれ、デジタルアートが壮観であると同時に親密にもなり得ることを示しました。

「Europa & ScuolaInCanto」では、日本の子どもたちが欧州のプロ歌手と共に歌いながらオペラの魔法を体験し、歌声の息吹を通して対話が繰り広げられました。

「Home Beyond the Dawn」では、ウクライナの現代アーティストにスポットを当て、脆さと強靭さ、故郷と亡命、戦争と創造性の不屈の持続を語る作品を展示。「Reset!」では、著名で社会的な活動にも積極的に関わるDJたちによるパフォーマンスが彩りを添えました。

「Architecture on the Waterfront」では、持続可能で包摂的な都市生活のビジョンを提示し、未来の都市像を再構築しました。

「Design Beyond Things」では、パビリオンを欧州デザインウィークの交差点へと変貌させ、展示と活気ある国際トークが展開されました。

EUの包括的アニメーションプログラム「EU-Japan Animation Collaboration」では、日・EUアニメーション・レジデンス、アニメーション特化のEUフィルムデーズ、ビジネスワークショップを通じ、日欧間で共有された知見と強化された創造的連携を通じた協力を促進しました。

また、Bo & Benoitによる参加型アートでは、来場者とともに、人権、気候変動、異文化理解に向き合う作品を制作しました。

 

Europe Japan Artists Residency

京都を基盤にした「Artisanal Intelligence」は、先祖代々の織物の知識と、持続可能なファッションに向けた大胆な新ビジョンを結びつけ、過去と未来の糸を紡ぎます。

そして、10月8日にはグランドフィナーレとして「FESTA Adriatico-Balcanica」が開催されます。アドリア海沿岸とバルカン地域の歌や踊り、伝統が一堂に会するシンフォニーとして、ヨーロッパ南部の魂を祝う忘れがたい祭典となります。

 

ウクライナに焦点を当てて

Home Beyond the Dawn

EUパビリオンの特筆すべき特徴は、2025年大阪・関西万博のウクライナ代表団との緊密な連携によって実現した、ウクライナ文化に特別な焦点を当てた点です。

「Home Beyond the Dawn」のようなプロジェクトでは、ウクライナの現代アーティストたちの創造性とレジリエンスを示すと同時に、欧州や日本の観客との活発な対話と交流の機会を生み出しました。

この協力関係は、国際文化関係の力を示すものでした。故郷、離散、そして芸術的忍耐をめぐる物語を共有することで、パビリオンは紛争時であっても、文化が理解、連帯、希望を育む手段となり得ることを示しました。

真のチーム・ヨーロッパの取り組み

本プログラムの成功は、EUの諸機関・サービスと全ての加盟国の積極的な参加なくしては実現し得ませんでした。展示の開催や芸術作品の提供、ワークショップや公演の企画など、本プログラムは「チーム・ヨーロッパ」のアプローチを証明するものとなりました。こうした協働の精神により、各イベントは個々の国の文化の豊かさだけでなく、欧州全体が共有する価値や創造性も反映することができました。加盟国の参加によって、パビリオンは欧州文化交流の生きたネットワークとなり、欧州内のみならず日本の観客との絆を深める場となりました。

文化を羅針盤として

大阪におけるEUの文化プログラムは、EU文化の多様性と豊かさを浮き彫りにしていますが、単なる展示活動ではありません。それは動き続ける対話であり、生きた実験です。観客に耳を傾け、観察し、共創し、参加し、考えることを促します。

おとぎ話、オペラ、デジタル展示から手織りテキスタイル、ユース管弦楽団からデザインに至るまで、すべての取り組みが本質的な問いを投げかけます―「文化はどのように、われわれをより持続可能で包摂的、かつ美しい未来へ導くのか?戦争、気候変動、社会的分断といった現代の課題に、文化はどう立ち向かうのか?」

文化こそが対話を生み、理解を深め、共に解決策を築くための最も有効な手段です。

欧州は、ゲストとしてではなく、日本と世界の布地に物語を織り込む準備をして、パートナーとして大阪をにやってきました。これこそが2025年大阪・関西万博が残す最も価値ある遺産です。文化とは、「われわれが誰か」を示すことだけではなく、「われわれが共に何者になれるか」を発見することなのです。