欧州委員会、脱炭素と経済成長の両立を図る「欧州グリーンディール」を発表

11.12.2019

EU News 228/2019

<日本語仮抄訳>

 

欧州委員会は本日、全ての政策分野において気候と環境に関する課題を機会に変えることで欧州連合(EU)経済を持続可能なものに転換し、その移行を全ての人々にとって公正かつ包摂的なものにするための行程表「欧州グリーンディール(European Green Deal)」を発表した。

 

欧州グリーンディールは、クリーンで循環型の経済に移行することで資源の効率的な利用を増やすとともに、気候変動を食い止め、生物多様性の喪失を逆転させ、汚染を減らすための取り組みを盛り込んだ行程表を提供している。

 

欧州グリーンディールは、特に運輸、エネルギー、農業、建物など経済の全ての分野と、鉄鋼、セメント、繊維および化学などの産業を網羅している。

 

2050年までに排出ゼロを達成する世界初の大陸になる、との政治的野心を法制化するべく、欧州委員会は100日以内に初めてとなる「欧州気候法(European Climate Law)」を提示する。われわれの気候と環境に関わる野心を達成するために欧州委員会は、2030年の生物多様性戦略、新産業政策と循環経済行動計画、持続可能な食料に関する「農場から食卓まで」戦略、および公害のない欧州に向けた提案も提示する。2050年の目標に向けた現実的な道筋をつけるため、EUの2030年の温室効果ガス排出削減目標の引き上げに向けた作業を直ちに開始する。

 

欧州グリーンディールの目標を達成するには、相当な投資が必要となる。現行の2030年の気候・エネルギー目標を達成するには、毎年2,600億ユーロもの追加投資が必要となると試算されているが、これは2018年の域内総生産(GDP)の約1.5%に相当する。これには、官民双方の投資が必要となる。欧州委員会は2020年早期に、投資ニーズに対応する一助となるべく、「持続可能な欧州に向けた投資計画(Sustainable Europe Investment Plan)」を提示する。EUの長期予算の少なくとも25%は気候行動に充てられるべきで、「欧州の気候銀行」である欧州投資銀行がさらなる支援を行う。民間部門がグリーン移行への資金提供に貢献するために、欧州委員会は2020年に「グリーン資金戦略(Green Financing Strategy)」を発表する。

 

気候変動と環境劣化との戦いは共通の努力であるが、全ての地域・加盟国が同じ地点から出発するわけではない。炭素集約的な活動に大きく依存する地域を支援するため、「公正な移行メカニズム(Just Transition Mechanism)」を創設する。同メカニズムは、新たな経済分野における再訓練や雇用機会へのアクセスを提供し、社会的・経済的に最も脆弱な市民を支援する。

 

欧州委員会は2020年3月に「気候協定(Climate Pact)」を立ち上げ、新たな行動の企画、情報の共有、草の根活動の開始、他の人々が模範にできる解決法の紹介などで、市民に声と役割を与える。

 

気候変動と環境劣化といった地球規模の課題には、地球規模の対応が必要だ。EUは引き続き国連の生物多様性や気候に関する条約における自身の環境上の目標や基準を促進し、そのグリーン外交を強化する。他の国や地域が取り組みを強化するよう、主要7カ国(G7)会合や20カ国・地域(G20)といった枠組みや国際会議のほか、二者間関係なども活用する。EUはまた、持続可能性を確保するために貿易政策を活用し、バルカン諸国やアフリカが自らの社会・経済的移行を支援すべく、これらの国・地域との連携を構築する。

 

 

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