欧州委員会、ウクライナにおけるロシアの戦争犯罪の証拠を収集・保存するため、ユーロジャストの権限強化を提案

EU News 100/2022

<日本語仮抄訳>

欧州委員会は本日、ユーロジャスト(欧州司法機関、正式名称 the European Union Agency for Criminal Justice Cooperation= Eurojust)による戦争犯罪に関する証拠の収集、保存および共有を法的に可能にする「ユーロジャストに関する規則」の改正案を発表した。紛争が続いているため、ウクライナ国内で証拠を安全に保管・保存することは困難である。ウクライナで行われた犯罪に対する責任を追及するには、ウクライナ国外での証拠の安全な保管を確保するとともに、さまざまな欧州・国際司法当局による捜査・訴追を支援することが極めて重要である。ユーロジャストは3月以降、ウクライナで行われた可能性がある戦争犯罪を調査する欧州連合(EU)合同捜査チームを支援してきた。ユーロジャストは国際犯罪に関する実務経験を有する一方、現行の規則はこのような規模の事態やこれほどまでの犯罪を想定しておらず、ユーロジャストの法的基盤を更新する必要がある。

ユーロジャストの権限強化

各国当局はすでにウクライナで犯罪が行われたことを示唆する証拠の収集に取り組んでいる。しかし、敵対行為が続いているため、同国内では証拠を安全に保存することができない。そのため、EUの機関や組織、ウクライナ内外の当局および市民社会組織などの第三者が収集した証拠を保存できる、一元的な予備保管庫を設置することが必要である。現行のユーロジャスト規則は、同機関が主要な国際犯罪など重大犯罪の捜査や訴追でEU加盟各国の対応を支援することを規定しているが、こうした証拠を永続的に保存し、必要に応じて分析・共有することや、国際刑事裁判所(ICC)などの国際司法当局と直接協力することは規定していない。

ユーロジャストがこうした犯罪に関する業務に適切に取り組めるようにするため、欧州委員会は、ユーロジャスト規則を改正することを提案している。共同立法者であるEU理事会と欧州議会によって採択されれば、今般の提案でユーロジャストは以下を行うことが可能になる。

  • 主要な国際犯罪に関する証拠の収集、分析および保存
  • 動画、録音および衛星画像などのデータの処理や、そうした証拠のウクライナ当局およびICCなど国際当局との共有。証拠共有は、EUのデータ保護規則を完全に順守して、適切な場合にのみ実施される。

 

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