フォン・デア・ライエン次期欧州委員会委員長、より高みを目指すEUに向けた布陣を発表
<日本語仮抄訳>
ウルズラ・フォン・デア・ライエン次期欧州委員会委員長は本日、次期欧州委員会の布陣と構造を発表した。
次期欧州委員会は、次期委員長が示した政治的指針の優先事項や野心を反映する。欧州委員会は、フォン・デア・ライエン次期委員長が欧州議会の支持を取り付けるベースとなった政策目標を中心に構成される。
われわれの取り組みの中心にあるのは、われわれの社会や生活の仕方を変容させている気候や技術、人口構成の変化に対処する必要性だ。既存勢力は単独で新たな道を進みつつある。新たな勢力が興隆し、強固になりつつある。これらの動きは、欧州の多くの社会に不安と懸念をもたらした。欧州連合(EU)は、健康な地球と新たなデジタル世界への移行の先頭に立たねばならない。しかし、それには人々を結びつけ、われわれ独自の社会市場経済を、今日の新たな野心に適合するように高めるしかない。
われわれがこの旅路につくとき、自身の強みや能力、潜在性の全てを最大限に活用しなければならない。男性であろうと女性であろうと、欧州の東西南北どこの出身であろうと、老若問わず、平等と万人への機会創出に重点を置かなくてはならない。われわれは、共通の価値を守り、法の支配を擁護しなければならない。今後5年間、全ての欧州諸機関は、不安の軽減と機会創出のために緊密に連携する必要がある。
フォン・デア・ライエン次期委員長は、「この布陣で『欧州の道』を切り拓く。気候変動に対し大胆に行動し、米国とのパートナーシップを強化し、より自己主張するようになった中国との関係を明確にし、例えばアフリカなどの信頼できる隣人となる。このチームは、欧州の価値や世界的水準の維持のために立ち上がらなければならない。私が求めているのは、断固たる決意に導かれ、目下の課題に明確に焦点を当て、答えを出す欧州委員会である。バランスのとれた、機敏で現代的な欧州委員会であってほしい。これからこのチームは、欧州議会の信頼を得なければならない。私の率いる欧州委員会は、持続可能な政策を進めることを確約する。そして、EUには多国間協調主義の守護者であってほしい。なぜならば、単独ではできないことを協力してやることで、われわれがより強くなれることを知っているからである」と述べた。
達成目標に合った新たな構造
次期欧州委員会は、EU外務・安全保障政策上級代表(ジョセップ・ボレル)を含め、8人の副委員長を擁す。彼らは、フォン・デア・ライエン次期委員長の政治的指針の最優先事項に責任を負う。「欧州グリーンディール」、デジタル時代に適合した欧州、市民のためになる経済、欧州的生活の保護、世界でより強力な欧州、および欧州的民主主義に向けた新たな取り組みなど、最も重要な包括的問題に関するわれわれの仕事を導く役割を果たす。次期欧州委員会の委員(欧州委員)は、各総局が提供する専門知識を管理する。
3人の執行副委員長は、2つの役割を果たす。次期委員長の3つの核心的課題のうちの一つに対し責任を負うと同時に、欧州委員としての担務もこなす。
フランス・ティーマーマンス執行副委員長(オランダ)は、欧州グリーンディールに関する作業を調整する。彼はまた、気候行動総局に支えられ、気候行動政策も管理する。
マルグレーテ・ヴェスタエアー執行副委員長(デンマーク)は、デジタル時代に適合した欧州に関する全ての議題を調整するほか、競争総局に支えられ、競争担当欧州委員を務める。
ヴァルディス・ドムブロフスキス執行副委員長(ラトビア)は、人々のためになる経済に関する作業を調整するほか、金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局の支援を受けて金融サービス担当欧州委員となる。
残り5人の副委員長は、以下の通りである。
ジョセップ・ボレル(スペイン、現スペイン外相):次期EU外務・安全保障政策上級代表、「世界におけるより強力な欧州」
ヴェラ・ヨウロヴァ(チェコ、現欧州委員):「価値と透明性」
マルガリティス・スキナス(ギリシャ、元欧州議会議員、長期勤続の欧州委員会職員):「欧州らしい生活の保護」
マレシュ・シェフチョビチ(スロヴァキア、現副委員長):「機関間関係と展望」
ドゥブラヴカ・シュイツァ(クロアチア、欧州議会議員):「民主主義と人口構成」
ドゥブラヴカ・シュイツァはまた、欧州の将来に関する会議に向けた欧州委員会側の作業の先頭に立つ。
フォン・デア・ライエン次期委員長は、献身的で、欧州を理解し、欧州市民が何を望んでいるかに耳を傾ける欧州委員会を率いたいと考えている。
- それ故に、欧州委員は全員、任期の前半で全てのEU加盟国を訪問する。彼らは首都や政権を理解するのみではなく、欧州の人々が実際暮らし、働いている地方も訪問することになる。
- 欧州と同様に、欧州委員会もまた、デジタル時代に適合しなければならない。欧州委員会の会合はペーパーレスでデジタルとなる。
- 次期委員会の目標は、市民や企業をもっと楽にさせることにある。欧州委員会が新たに法律や規則を作る場合、官僚主義的手続きを減らすために「1つ作ったら1つ廃止する」という原則を適用する。
残りの委員候補は以下の通りである。
ヨハンネス・ハーン(オーストリア)は「予算と管理部門」を担当し、フォン・デア・ライエン委員長に直接報告する。長年欧州委員を務めてきた同氏は、近代的な管理部門を確立することの重要性を理解している。
ディディエ・レンデルス(ベルギー)は、経験豊かな同国の財務相、外務・欧州担当相および国防相であった。次期委員会で彼は、「司法」(法の支配の問題を含む)に責任を負う。
マリヤ・ガブリエル(ブルガリア)は、現職の欧州委員で、デジタル担当として同分野に献身と熱意を注いできた。今後は若者世代に新たな展望を生み出すことに注力する(「イノベーションと若者」担当)。
ステラ・キリアキデス(キプロス)は、社会問題、保健およびがん予防に長年の経験を有する医療心理学者である。彼女は「保健」分野を担当する。
カドリ・シムソン(エストニア)は、長く同国議会の議員を務めた経済・インフラ担当相だ。彼女は「エネルギー」分野を担当する。
ユッタ・ウルピライネン(フィンランド)は財務相やフィンランド議会外務委員会の一員として長く務めたのみならず、特使としてエチオピアでの勤務経験もある。彼女は「国際的連携」を担当する。
シルヴィー・グラール(フランス)は元欧州議会議員で、献身的で信念を有する欧州人である。「域内市場」担当委員として、産業政策に関する取り組みの先頭に立ち、デジタル単一市場を促進させる。彼女はまた、新たに設立される防衛産業・宇宙総局に対する責任を負う。
ラースロー・トローチャーニ(ハンガリー)は同国の元法相で、「近隣地域と拡大」担当となる。
フィル・ホーガン(アイルランド)は現在農業担当欧州委員であり、その経験を今度は「貿易」担当として活かすことになる。
パオロ・ジェンティローニ(イタリア)は同国の元首相、元外相であり、その豊かな経験を「経済」担当として活かす。
ヴィルギニユス・シンケヴィチュウス(リトアニア)は同国の経済・イノベーション担当相で、「環境と海洋」を担当する。
ニコラ・シュミット(ルクセンブルク)は、欧州議会議員と同国の雇用・労働担当相としての経験を用い、「雇用」を担当する。
ヘレナ・ダッリ(マルタ)は、同国の社会対話・消費者問題・市民的自由担当相や欧州問題・平等担当相を歴任し、その政治家人生を平等に捧げてきた。彼女は「平等」を担当する。
ヤヌシュ・ヴォイチェホフスキ(ポーランド)は長く欧州議会の農業委員会のメンバーを務め、現在は欧州会計監査院の一員である。彼は「農業」を担当する。
エリサ・フェレイラ(ポルトガル)は現在ポルトガル銀行の副総裁で、かつては長く欧州議会議員を務め、同国の計画担当相、環境相を歴任した。彼女は、「結束と改革」を担当する。
ロヴァナ・プルンブ(ルーマニア)は、欧州議会議員(社会民主グループ副代表)で、同国では環境・気候変動担当相、労働相、欧州基金担当相、教育相および運輸相を務めた。彼女は「運輸」を担当する。
ヤネス・レナルチッチ(スロヴェニア)は、同国の外交官で、欧州問題担当相を務め、国連、欧州安全保障協力機構およびEUと何年にもわたり緊密に連携してきた。彼は、「危機管理」担当となる。
イルヴァ・ヨハンソン(スウェーデン)は、同国の雇用担当相だが、かつては学校担当相や保健・高齢者介護担当相、議会議員も務めた。彼女はまた、雇用、統合、保健および福祉の分野で名高い専門家である。彼女は「内務」を担当する。
今後の動き
次の段階として、欧州議会は、EU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長を含む欧州委員全員を欧州委員会として一括で、承認しなければならない。
その前に、各委員候補は、欧州議会の手続き規則に則り、各当該委員会の聴聞を受ける。
欧州議会が承認すれば、EU条約第17条7項に則り、欧州理事会が欧州委員会を正式に任命する。
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