女性に対する暴力撤廃に関する欧州委員会とEU上級代表の声明

25.11.2019

EU News 211/2019

<日本語仮訳>

11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」に先立ち、欧州委員会とフェデリカ・モゲリーニ欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、以下の声明を発表した。

「女性と女児に対する 暴力は、全人類に対する暴力であり、欧州や世界のいかなる場所においてもあってはならない。しかし、誰もが知っているように、われわれの取り組みにもかかわらず、この課題の克服にはまだ程遠い状態にある。

女性に対する暴力は、あらゆる場所で生じている。安全な場所はどこにもなく、家庭においても、である。むしろ逆に、女性は家庭の中だけではなく、職場、学校や大学、路上で、避難・移住中に、そしてサイバー暴力やヘイトスピーチを通じてなお一層オンライン上でも、暴力の標的にされている。

この問題の規模は、憂慮すべき状態にある。欧州では3人に1人の女性が身体的・性的暴力の両方またはいずれかを経験している。EU域内で性的搾取を目的とした人身売買の犠牲者は、ほぼ全ての場合、女性と女児である。

発展途上国では、3人に1人の女児が18歳に達する前に結婚している。約30カ国でいまだに実施されている、女性器切除の対象となった女性と女児は、少なくとも2億人いる。

EUおよび国際社会として、女性と女児に対するあらゆる暴力行為を防止し、公然と拒否し、非難することに全力を挙げて取り組むのは、われわれの責任である。

また、女性と女児が自身が受けた犯罪を通報するのに安全な環境を整備し、被害者を支援し保護することは、われわれの責務である。

EUは、われわれのパートナーと共に、法的枠組みや制度を強化し、開発や教育を支援し、暴力を逃れた女性に対するサービスを改善し、暴力の根本原因に対処し、女性のエンパワーメントを促進するために不断の努力を続けることを約束する。

しかし、女性と女児に対する暴力を終わらせるには、機関レベルでの強いコミットメントだけでなく、国際機関、非政府組織(NGO)および市民社会全体からの幅広い関与、そして何よりも男性の関与が必要である。

そのため、女性と女児に対する暴力を撤廃するという、われわれの目標は今も明確である。EUは、全ての女性と女児が自由かつ安全な生活を送る権利を守ることを目的とする、こうした国際的な活動の先頭に立ち続ける。われわれがそうするのは、われわれの現在と未来のためである。女性は、公正で開かれ発展した民主的な社会の柱であるからだ。また、いかなる場合も、女性が自由かつ安全に自らの役割を果たす自由は奪われてはならない」

EUは、暴力の撤廃に向けて、以下のような実効性のある対策を実施している。

  • 「被害者の権利に関するEU指令」は、犯罪被害者の権利の拡充と改善、また性的またはジェンダーに基づく暴力の被害者への特別な支援を担保する。
  • 欧州委員会は、女性に対する暴力および家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会の「イスタンブール条約」の加盟に向けた手続きを進めている。
  • 「権利・平等・市民権プログラム」では、ジェンダーに基づく暴力の防止、被害者および危険な状態にある女性や女児の支援、専門家の養成、ならびに、さまざまなサービスに関する能力構築に取り組む草の根プロジェクトへの資金提供を通じて、女性と子どもに対する暴力への対策を支援している。

EUはまた、EU域外においても、女性に対する暴力への対策を実施している。

  • 過去2年間、女性器切除に関する保護やケアサービスの提供を通じて、150万人を超える女性や女児を支援してきた。予防の取り組みは、850万人に相当する約3,000の集落が女性器切除の慣習を破棄することを正式に発表するなど、良い影響を及ぼしている。
  • 児童婚について、EUは、160万人を超える人々を対象に、女児の権利に関する意識や慣習を変えることを目的とした一連の取り組みを実施してきている。
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